北狄の合評会は12日

 北狄357号の合評会は、12日午後6時から青森市堤町の千成寿司本店で行われます。
 私の「城ヶ倉大橋」については、たくさんの方から思い思いのご批評をいただいた。作中の氏名に誤記があったのと、必要以上に人名が文中に多いとの正しい指摘を受けました。後半部分に難点ありとの指摘を受け、目下、鋭意書き直しているところです。加筆訂正して50枚くらいの短編小説としようと思っています。
 北狄357号の執筆者と作品は12月下旬の東奥日報紙上で紹介されましたが、以下の通りです。
 1. 小野誠二;「歩いた、それも走るように」(19枚)
 2. 宰木陽二;「歳月」(5枚)
 3. 倉谷広隆;「擦紋のように(二)」(26枚)
 4. 桜田孝志;「百万の『芥川龍之介全集』」(7枚)
 5. 青柳隼人;「縄文孤愁」(61枚)
 6. 笹田隆志;「城ヶ倉大橋」(33枚)
 7. 石沢 武;「澪標」(69枚)
 8. 秋村健二;「小説 第81回臨時会(6)審判」(51枚)
投稿 佐々木英明;「詩 女体モデル」

 小野さんの小説は、日記体で書かれている。「自分・家内・娘・孫」のいわゆる孫小説。しかも、孫が初歩きしたことが書かれている。小野さんの小説で奥さん(家内)が登場して、服部先生の作品を思い出しました。
 宰木さんの掌編小説は、いつもながらの手練の魔術師。まさに歳月を感じさせる小品だ。
 倉谷さんの擦紋のように、彼の一連の蓬田村の遺跡発掘と擦紋土器にまつわる話である。今回の作品は、ひとりの考古学者に照準をあてている。前近代的な徒弟制度的な考古学の講座の師弟間のことが、恵まれない友人に限りない愛情をそそいで書いてある。いい作品だ。
 桜田さんの作品は、芥川全集の第五巻を百円で古本屋から買い、それを百万の価値を見出すという話だ。一読を。
 青柳さんの小説は不思議な小説だ。いつも感じるのだが、繊細な描写とどことなく病的なというか、なまめかしさと言うか、しゃれたところもあり、それでいて残酷さも秘めた作品に仕上がっている。
 石沢さんの作品は、彼でなければ書けない私小説で、今号の最大枚数の小説だ。それだけで頭が下がる。病気をおして書き続ける姿勢に感服だ。
 秋村さん小説は、秋村さんでなければ書けない作品だ。そろそろ「トレンチコート」のような小説を読みたいと思うのは、わがままだろうか。
 今号の収穫の一つは、投稿してくれた佐々木英明さんの詩だ。彼の人生観、恋愛についても心情、これだけの世界的な視野で書かれると言葉もない。
 とにかく、12日の合評会で、佐々木英明さんから同人の作品評がきけるのは何とも嬉しいが、怖い気持もある。彼こそ、小説の読み手としては凄い眼力の持ち主なのだから。