未津さんの褌

 明日は午後1時から青森ペンクラブの会誌「北の邊」の合評会。
 北の邊には、北狄から4同人が寄稿している。
 順をおって紹介する。
 小野允雄;(エッセイ)「281人の殉職」
 笹田隆志;(エッセイ)「永遠と三月十一日」
 藤川直迪;(エッセイ)「凧あげ」
 未津きみ;(小説)「近代氏の褌」
 4人だけとは元ペンクラブ会長を輩出したこともある「北狄」とすれば少し寂しいような気がする。しかし、小説4篇のうち、未津さんがひとり気を吐いてくれたのはありがたい。小説中心の同人誌「北狄」の面目躍如である。
 私も「北の邊」編集長に罵倒されないように、未津さんにあやかって精進しなければと思う。
 さて、巻頭を飾る小野さんのエッセイは、大震災で殉職した消防団員及び消防職員281名のことを書いている。いかに仕事の上とはいえ、人の命を救うために自らの命を引き換えにせざるをえなかったという痛ましさを語っている。
 藤川直迪さんの北狄でのペンネームは宰木陽二である。藤川さんのエッセイ「凧あげ」を読み、うーんと唸った。さすがである。木造出身の藤川さんは、太宰の津軽の引用から始める。藤川さんは、太宰が木造の印象をポプラの薄みどり色の若葉の可憐さにたとえたことを思い出し、そのポプラ林のむこうの雪原で春先に凧あげをして遊んだことに結びつける。凧あげが、凧絵にとび、弘前だこと青森だこの違いにまで話は及ぶ。最後は、藤川さんが二十年前に贈られた「一枚の凧絵」を毎年春先、廊下の壁に掲げ、往時の日々を思い出しているのだそうだ。実にうまい。一級品の味わいだ。小説にしてもいいものだ。
 最後に、未津さんの「近代(こだい)氏の褌(たふさぎ)」について触れたい。さすがその昔、青森から芥川賞をとるならこの人だといわれた作家である。最近、北狄に詩を発表していたのが嘘のような小説である。まず題に驚かされた。近代がこだいである。褌がたふさぎとルビをふってある。勿論、ルビがなければ読めやしない。抱腹絶倒のパロディー小説を未津さんは書いた。未津さん新境地であることに間違いはなく、間違いなしに面白い。しかし、未津さんがこの小説を何故、北狄に発表しないのかわかる気がした。私には近代氏が北狄元代表で故人の服部進さんに思えるからだ。服部さんがこの小説を読めば何というか、それを訊いてみたいような気がする。褌愛用派だった服部さんのこと、愛用の絹の褌を一布、未津さんに贈呈したと思えるからだ。それにしても恐ろしい大老女である。たまげた。