「論語」の先進11篇につぎの章がある。;
(11-11)「 季路問事鬼神。子曰。未能事人。焉能事鬼。日敢问死。日未知生。焉知死。」
これの読み下し文は、つぎの通りです。
「季路(きろ)、鬼神(きしん)に事(つか)うることを問(と)う。子(し)曰(いわ)く、未(いま)だ人(ひと)に事(つか)うること能(あた)わず、焉(いずく)んぞ能(よ)く鬼(き)に事(つか)えん。曰く、敢えて死を問う。曰く、未だ生を知らず、焉んぞ死を知らん。」
金谷治(岩波文庫)の日本語訳はこうです。
「季路が神霊に仕えることをおたずねした。先生はいわれた、『人に仕えることもできないのに、どうして神霊に仕えることができよう。』『恐れ入りますが死のことをおたずねします。』というと、『生もわからないのに、どうして死がわかろう。』」
ここで、註はいかのとおりです。
季路;… 孔子の門人。姓は仲(ちゅう)。名は由(ゆう)。字(あざな)は子路、または季路。孔子より九歳年下。門人中最年長者。
事;… 仕える。奉仕する。
鬼神; … 祖先の神霊。
未;… 再読文字。「イマダ…(セ)ズ」とよむ。否定の意を示す。「まだ~しない」と訳す。
焉;… 反語の形。「イズクンゾ…(セ)ン」とよむ。「どうして…であろうか(いや~でない)」と訳す。
鬼;… 鬼神に同じ。
敢問;… 失礼ながらお尋ねします。
死; … 「死の意味」「人間の死後」「死にかた」「死に処する態度」など、諸説ある。
生;… 「生きることの意味」「生きかた」など。
焉知;… どうしてわかろうか、わかるはずがない。
孔子は弟子の子路に、人間に仕えることを知らずして神霊につかえることはできない、生を知らずして、死なんてわかるはずがない、と諭しています。