床屋賃をケチる

 今朝の車の中で、女房とこんなやりとりがあった。
 「きのう、翔(三男)に見苦しいから、髪を切れといわれた」
 ほんとうは、そのあと、女房に仕事から帰ってきたら、髪を切ってほしいと頼むつもりだったが、断られるのが嫌で、言うのをやめた。
 「2千8百円は痛いよな。ちょっと髪を切るだけで。自分で鋏みをいれようかな」
 女房は賛成しなかった。かつて、女房に髪を切ってもらったことがあった。傲慢な亭主関白だった私は、女房の床屋の腕に文句をつけて、彼女から床屋を拒絶されたことがあった。私は頭にきて、坊主狩りにしてきたことがあった。それ以来、女房に床屋を頼んだことはなかった。
 無職となった去年は一度しか床屋に行かなかった。収入のない年金生活者には2800円という床屋賃は大きな出費だ。たかが髪の毛、されど髪の毛である。
 「1000円出して、髪をきってもらえばいいじゃないの」
 女房は安い床屋に行けという。さらに続けて、
 「どうせ、一年に一度しか行かないのだから、2800円だしてゆっくりと床屋に行ってきたら」
 私は女房を職場に送り届け、車庫前の雪かきをしたあとで風呂を焚いた。鏡を見ると何か自分に床屋ができそうに思えた。長鋏を持ち出し、両手で頭の髪をばっさり切り落とした。最初は後髪、次に側髪に何度も鋏を入れた。
 一応、髪の毛を短く鋏で切り込んで、風呂で洗い流してさっぱりした。2800円以上の効果はあったと思う。