Q6-2.なぜ原発が再稼働されるのか?
2011年3月11日の東日本大震災と福島第一原発事故によって、日本の原発政策は大きく変わりました。それまでの原子力安全委員会にかわり、規制の権限が強化された原子力規制委員会が設置されました。原発の重大事故対策について、規制委がさだめた新規制基準にそって2013年7月8日より原発再稼働に向けた安全審査が始まっています。ここで、2014年3月現在、全原発が停止中でしかも、電力供給に支障がないのに、なぜ原発が再稼動されようとしているのか、という問いに答えます。
その答えは、そもそも震災後の原子力発電のシナリオに即原発ゼロ(即全廃)はなかったからです。シナリオは、①開発継続、②開発継続(40年廃止)、③開発廃止(40年廃止)、④5年以内全廃、という4つのシナリオを初めから想定し、再稼動を前提としていたのです。しかも、④の「5年以内廃止」のシナリオについても、火力・再生可能エネルギーの増強条件によって、3段階に区分されていました。
原発再稼動の必要性の根拠として、福島県以外の立地県・自治体から再稼動要請、1兆Kwhの電力供給のうち2700億Kwhを占める原子力発電は再生可能エネルギーとならんで安定供給と低炭素化をもたらし、化石燃料で代替した場合の化石燃料の消費増などの資源問題、燃料費用などの費用増などの経済性、二酸化炭素排出の増加という環境性の問題などをあげています。
原発の再稼働に向けて、新安全基準の決定をうけて適合審査を申請しているのは、2014年2 月14日現在で16原発48基中10原発の17基ですが、このうち泊3号、大飯3・4号、高浜3・4号、玄海3・4号、川内1・2号、伊方3号の10基を先行審査し、川内原発について最優先審査を行っています。すでに再稼動のケースとして、日本エネルギー研究所は、14年度末の時点で、低位6基から高位28基の3ケースにわけて試算し、その日本経済へ与える影響をもとに規制委の新基準適合審査に圧力をかけています。
仮に、再稼働が一番少ないケースの6基の再稼働が認められ、運転再開すると想定して、2014年度の平均稼働月数を9カ月とし積算した場合、震災前の2010年度と比較し、発電量230億Kwh(2880億Kwh)、発電コスト12.9円/ Kwh(8.2円/ Kwh)、化石燃料輸入総額26.6兆円(18.1兆円)、CO2排出量1205Mt-CO2(1123 Mt-CO2)となるとし、再稼動が増えれば増えるほど経済効果が増すとしています。このように経済効果だけを優先して、再稼動を規制委に迫っているというのが実態なのです。