三内の家のこと

 三内稲元に古い家が残っている。去年の9月から空き家になっていた。固定資産税や火災保険もバカにならないので、友人に頼んで借り手を探してもらっていた。大震災の避難者にタダで提供しようかとも考え、そちらの手配も頼んでいた。
 そしたら、無職無収入の私のことを憐れんだのか、かの友人が三内のボロ家でもいいという、借主を見つけてきてくれた。わずか1カ月(実際は荷物を運んだだけで、あまりに古く汚くて、ネズミも出るということで住まうのをやめて出ていった)で退去した前の借り手と違って、今度は自営事業者とかで、手ごろで安い事務所物件を探していたそうで、一軒家を2万5千円で借りてやってもいい、ということになった次第。
 今日は、その友人がやっている廃棄物収集の車で三内の家の前の借主とその前の借主の残したごみを撤去する作業となった。椅子やテーブルまで潰し入れ込むパッカー車の威力に感心しながら、とにかく不燃物を残して、全部処分してしまった。
 がらんとした家にひとり立った瞬間、この家が建った14歳からいまの61歳までの人生が走馬灯のように春の風と共に私の頭の中を舞った。