今日の論語一日一章「人而無信、不知其可也」

 孔子は言行一致が人としての信の基本だと言っています。人は信という徳があって始めて万事を行うことができるのであって、信がなければ何も為すことはできない、と言っています。

 今日の論語一日一章は、第2篇「為政第二」の第22章「人而無信、不知其可也」(人にして信なくば、其の可なるを知らず)です。
 この章の漢文原文は次の通りです。
 「子曰、人而無信、不知其可也。大車無輗、小車無䡄、其何以行之哉。」
 これの読み下し文はこうです。
 「子曰く、人にして信なくば、其の可なるを知らず、大車輗なく、小車䡄なくば、其れ何を以て之を行(や)らんや。」
 さらに、中国語簡体表記はこうです。
 「子曰,人而无信,不知其可也。大车无輗,小车无贵軏,其何以行之哉。」
 ここで、日本語訳はこうなります。
 「孔子が言われた。もしひとが心にもないことを言い、言ったことを践(ふ)み行わないで、信という徳がないならば、彼がそれで好いと思っていても、我(わし)には何故にそれで好いのかわからない。人は信という徳があって始めて万事を行うことができるのである。信はかの大車の輗や小車の軏のようなものである。輗と軏がなければ、大車小車を運行させることができないように、人は信がなければ何事も行うこともできないのである。」
 この章の、語句の解説はこうなります。
 信;心と言、言と行との一致することをいいます。
 其の;信なきことをさしています。
 大車;重い物を載せる車で牛にひかせ、轅が二本あるもの。
 輗;轅の先端の横木で、軛をを縛って牛につけるもの。
 小車;人の乗る車で馬にひかせるもの。轅が一本で弧状をなしている。
 軏;轅の端の弧状に曲がったもの。衡(よこぎ)をひっかけて馬につけるもの。
 この章は、孔子が信が万事の本であることを述べた章です。
 輗と軏とは、車と牛馬とを接続するものです。信は己と人とを接続するものです。輗と軏とがなければ車は牛馬と離れてしまって動かれなくなる。信がなければ己は人から離れてしまって世に立ってなにもすることができなるなる、といっているのです。