長春にできた回転寿司

 11月中旬の金曜日のことである。三年の女子学生たちから昼御飯に誘われた。昼12時きっかりに2人が研究室に迎えに来て、正門前からタクシーで5分ほどの中華レストランに向かった。
 二階のテーブルにはすでに別の2人が待っていた。ひとりが、長春に10月末に新しいモールができたという。大阪に4年半いたことがあるという彼女が、そのモールの中に長春では初の回転寿司屋をみつけ、母親と買物のついでに行って食べてきたという。中国特有の「まあ、まあ、の味」という表現に加え、「先生も一度行ってみたら」と勧められた。
 秘かに中国語を練習しているというものの、まだ一人で街中に出かけるほど度胸も坐っていないので、同行者の学生が誘ってくれるのを待った。結局、12月3日の金曜日の午後、2年生のクラスの学生たちが連れて行ってくれることになった。2台のタクシーに分乗して私たちは万達広場(ワンダープラザ)という巨大マーケットモールに向かった。そこの3階の吹き抜けモールの両側に中国、韓国、インド、ベトナム、日本料理店などが暖簾を連ねている。その中の中央部の一角に小魚回転寿司という店があった。
 一皿6元(78円)の白皿が最低で、最高15元(205円)の黒皿はイクラとウニだった。鮪は12元(156円)だったが、メニューで注文しなければならないようで、回転台には回っていなかった。私は会計係の学生に100元(1300円)を渡していたが、ビールにラーメンまで食べて、20元(260円)のお釣りまでもらった。ネタもシャリもいまいちだったが、食べられないわけではなく、豚骨ラーメンは旨かったし、シシャモは美味だった。地ビールの金氏百ビール6元(78円)も私は青島ビールより好感をもった。
 そんなわけで、翌日4日の東北新幹線青森開業のニュースをテレビで見て故郷を懐かしんだ私は、日曜日の夕方にも別な三年生の2人に誘われて再びワンダプラザに向かったのである。当日は日本語能力検定試験日でもあり、試験を終えた6人の女子も加わって、店内は日本語が飛び交い、異様な雰囲気となった。満席の店内のほとんどが中国人で板前ももちろん中国人。この夜、8人の女子学生と日本酒で乾杯したのが嬉しかった。片道26元(338円)のタクシー代も苦にならないほど楽しいひと時だった。