『詩経』と『万葉集』について

 孔子は8歳のころから詩経を学んでいる。漂泊の哲人・孔子が最初に学んだ詩経万葉集との関連について、白川静の「詩経」から紹介したい。
「歴史がその黎明をむかえること、かがやかしい古代歌謡の時代があった。歴史はその歌ごえとともにはじまる。『リグ・ヴェーダ』の聖歌、ホメロスの詩、『聖書』の詩篇などがそれである。
 インドの『リグ・ヴェーダ』は前十二世紀前後のものとされている。それより少しおくれて、中国では『詩経』の時代がはじまった。おそらく前十世紀ごろのことであろう。絶対年代ははるかに下るが、わが国の『万葉集』も古代歌謡として相似た性格をもつ歌集であった。民族の歴史がはじまろうとするその時期に、どうしてこのような古代歌謡の時代が、忽然とあらわれてくるのであろうか。それは一つの大きな謎であるように思われる。」