青森公立大学と地方財政

 市役所で1年2カ月働いてみて、地方自治体がいかに財政でがんじがらめになっているかつくづく感じたものだ。何をするにつけ、財政の裏付けがあるか、それが問題となって、先に進まないことが往々にしてあった。市役所の中に地方財政を専門に学んできた人が職員でいるのだろうかと思うことがたびたびあった。国や県の締め付けをかいくぐって、市独自のアイデアで何とかできないのか、そういう発想と工夫ができる職員がいるとは思えなかった。
 青森公立大学青森市が中心となって東津軽郡の町村によって一部事務組合として1993年に設置された。それが2009年には青森市が設置する公立大学法人青森公立大学が運営・設置者となって今日に至っている。したがって、青森市立大学のようなものである。
 公立大学の教育目的には、「経営経済の専門性を持った教養人の育成」とあるが、自治体行財政に明るい教養人を輩出してほしいものだと思っていた。
 公立大学は経営経済学部の単科大学であり、学部には経営学科、経済学科、地域みらい学科の3学科がある。当然に、経営者や企業職員だけでなく地方公務員を養成する目的も兼ね備えているべきである。
 3年前からクリスマスのあたりに、友人であり先輩でもある岩手県立大学の田中信孝教授が青森公立大学へ集中講義で教えに来ている。田中先生は地方財政の専門家で、著書論文も多数だしている学者だ。
 去年は私が中国にいたため会えなかったが、今年も一昨年に続いて集中講義の合い間に会食する機会を得た。
 田中教授は、青森公立大学が経営経済の単科大学で、しかも市立の大学なのに、地方財政を専門に教える教師がいないのを不思議がっていた。地方財政を抜きに地方自治体の行政運営を語ることのできないなかで、せっかく大学を設置しておきながら、地方財政の専門教師をもたずに他大学から非常勤講師を招いての集中講義で単位をとらせているのは学生が可哀そうという話だった。
 田中教授は、22日夜着任し、23・24日、26・27・28日と5日間(日曜日だけ休み)、1日3コマ、都合15コマを2年生に集中講義するということだった。
 少子高齢化地方財政悪化の昨今、地方公立大学の在り方が問われている。青森公立大学が単にどこにでもある経営経済のカリキュラムによる教育ではその存在価値を問われかねない事態となっている。秋田市国際教養大学とまでいかなくとも、青森公立大学地方財政に明るい学生を多数輩出して、県や市町村の場で活躍する人材を育成すべきではないのか。
 話は変わるが、青森市出身者でこれまで芥川賞直木賞の受賞者はひとりもいない。それと直接関係はないが、青森市には4つの四年制大学がある。県立保健大学、公立青森大学、私立青森大学、私立青森中央学院大学である。この四つの大学にはいずれも文学部はない。
 青森公立大学に文学部をつくったらどうだろうか。国文科、英文科、それに中国文学科の三学科とする。1学科20人定員で徹底した少人数教育をおこなったらどうだろうか。教員の任期は5年とし、再任のために切磋琢磨させるようにする。
 いずれにしても、青森市青森公立大学にもっと口を出すべきであり、大学のビジョンを高く掲げ、大学の存在価値を高めるにはどうしたらいいか、もっともっと議論すべきではないかと思う。