北狄がほこる私小説の泰斗・石沢武

 北狄の石沢武さんは北狄にはなくてはならいかけがえのない同人でした。わたしが北狄に加入した北狄300号祭では、故服部進さんとともに式典のいっさいを仕切られた重鎮でした。そもそもの文学の出発点は小説というより、短歌であったと聞かされています。県歌人懇話会の事務局長をされていたこともあったという。それが、北狄に加入してからは、小説一筋、とりわけ私小説の道を脇目もふらず、359号(2012年6月25日発行)まで欠かすことなく執筆の筆を休めることはありませんでした。7月22日、心筋梗塞の発作で県病に運ばれるまで、360号への小説を書き続けていたということです。まさに、文学一筋、私小説まっしぐらの人生だったと思います。
 石沢さんは日ごろ、「わたしは小説を書くことしか、頭にありません。小説を書くことが私のすべてです。すべてを小説を書くことに打ち込みます」と語っていました。87歳、まさに大往生だったと思います。ご冥福をお祈りします。