今日の論語一日一章「賜也、非爾所及也」

今日の論語一日一章は、第5篇「公冶長第五」第11章「賜也、非爾所及也」(賜や、爾の及ぶ所に非ず。)です。
この章の漢文原文はこうです。
「子貢曰、我不欲人之加諸我也、吾亦欲無加諸人。子曰、賜也、非爾所及也。」
また、これの読み下し文はこうなります。
「子貢曰わく、『我、人の諸を我に加ふるを欲せざるや、我も亦諸(これ)を人に加うること無きを欲す。』子曰わく、『賜や、爾の及ぶ所に非ず。』」
さらに、中国語簡体表記はこうです。
「子贡曰,我不欲人之加诸我也,吾亦欲无加诸入。子曰,赐也,非尔所及也。」
ここで、この章の日本語訳はこうなります。
「子貢が自らその志す所を述べて曰うには、『自分が他人からされることを好まないような事柄は、自分もまた他人にしないようにしたいと思います。』孔子がこれを聞いて曰われるのには、『賜(子貢の名)、これはまだ汝にできることではない。』」
今日の語句・語彙の注釈はこうです。
我;彼に対する語です。
吾;自己を指す語です。
加ふ;施すの意です。
諸(これ);「之於」の二字のように読みます。
この章は、無我の為し難きことを述べたものです。上節は子貢が無我をもって自ら任じ、下節は孔子がこれを抑えたのであるが、抑えたのは実は前に進めるためなのでした。
ここで、子貢の志す所は恕である。論語の衛霊公篇に子貢が「一言にして以て終身之を行ふべき者あるか」と孔子に問うた時、孔子が「其れ恕か、己の欲せざる所は人に施すこと勿れ」と曰われたのをみると、恕という徳は子貢の行い難いものであったとみえます。