風刺の意義

 広辞苑によれば、風刺と冷嘲の違いはこうです。
 ふう‐し【諷刺・風刺】・・・魯迅のいう風刺はもちろん①です。
 ①遠まわしに社会・人物の欠陥や罪悪などを批判すること。「世相を―した歌」
 ②それとなくそしること。あてこすり。
 れい‐ちょう【冷嘲】‥テウ
 ひやかしあざけること。
 魯迅は作品(小説・エッセー)で表現する風刺と冷嘲には、麗しさと厭味くらいの大きな違いがあると言っています。広辞苑では、麗しさと厭味はこう違いが書かれています。 
 うるわし・い【麗しい・美しい・愛しい】ウルハシイ
 [形]うるは・し(シク)
 (語中のハ行音がワ行音に変った早い例。奈良時代には「宇流波志(ウルハシ)」であったものが、平安初期には「宇留和志(ウルワシ)」となった。事物が乱れたところなく完全にととのっている状態を表す)
 ①端正である。立派である。壮麗だ。記中「畳(タタ)なづく青垣山ごもれる大和し―・し」。源桐壺「唐めいたる粧ひは―・しうこそありけめ」
 ②(色彩が)見事である。整っていて美しい。きれいである。宇津保楼上上「夕ばえしていといみじく色―・しう花やかにきよげにみえ給ふを」。名義抄「妖、ウルハシ・カホヨシ」。「見め―・い」「―・い乙女」
 ③行儀がよい。礼儀正しい。きちんとしている。格式ばっている。源玉鬘「―・しくものし給ふ人にてあるべき事はたがへ給はず」。大鏡師尹「よろづに遊びならはせ給ひて―・しき御ありさまいと苦しくいかでかからでもあらばやと」
 ④(人の仲が)理想的にいっている。仲が良い。源若菜上「御仲―・しくて過ぐし給へ」。「―・い友情」
 ⑤(性格が)曲っていない。几帳面だ。大鏡師輔「御心いと―・しくて世の政かしこくせさせ給ひつべかりしかば」。平家一二「この大納言は―・しい人と聞え給へり。…さまざまにへつらひ給ひしかどもこの人はさもし給はず」
 ⑥(気分や表情が)はれやかである。浄、国性爺「叡慮殊に―・しく」。「御機嫌―・くいらっしゃる」
 ⑦愛すべきである。かわいい。いとしい。万一五「―・しとあがもふいもを山川を中に隔(ヘナ)りて安けくもなし」
 ⑧正真正銘である。まちがいない。平家一二「故左馬頭(カミ)義朝の―・しきかうべとて」
 いや‐み【嫌み・厭み】
 相手に不快感を抱かせる言葉や態度。いやがらせ。「―を言う」「―たっぷり」「―な人」
 つまり、魯迅は、心をこめて、つまり善意と情熱をこめて、どんな小さなことでも、真実を偽りなく、風刺という形で表現できたら、それは素晴らしい作品となると言っています。