4月20日「無援の抒情詩人と幻のロックシンガーの一夜」

 私はあと一週間、20日金曜日の夜の「佐々木英明と古川壬生のひとり芝居と詩の朗読とバラードの夕べ」本番まで稽古と舞台準備に集中することにした。
 佐々木英明は高校の同級生で、高校を卒業後上京して、寺山修司に師事し、映画「書を捨て町に出よう」に主演するなど、天井桟敷で活躍した演劇人であり、しかも高校時代からの孤高の詩人でもあった。 その英明が、寺山修司の死後故郷の平内町に帰郷し、詩作をつづけていたが、還暦をすぎ、再び劇場の世界に戻ることになった。
 伝説の詩人の佐々木英明が幻のロックシンガー古川壬生とコンビを組み、二人の橋渡しをした私とともに一二三会を結成し、青森市新町の旧おきな屋新町店を舞台に還暦トリオで雄叫びを上げることになった。そして、佐々木英明は昨年の自作詩の朗読に続き、今年はひとり芝居に挑むことになった。
 大震災で一カ月延期した昨年4月26日のジョイントコンサートでは英明は自作詩を「永遠と一日」のサウンドトラックをバックに熱演し、おきな屋に集まった60人の観客を魅了し、ロックバラードを歌った古川壬生も喝采を博した。
 一年を経た今年の公演では、古川壬生作・演出のひとり芝居「ホノルル ナイト」を佐々木英明が演ずることに決め、第一部として古川壬生も自作詩「好きな動物はキリン」の朗読とロックバラードの自作曲を3曲歌うことになっている。
 「ホノルル ナイト」は場末の盛り場の呼び込み男の人生の哀歓を英明がしみじみと一人芝居で演ずる。ひょうひょうとしていて、どこか凄味のある妖しげな魅力のアラ還の呼び込み男を英明は50分独白し演じきる。
 もう稽古だけで10回を超えるが、英明は一人芝居の長台詞を完全にマスターしていて、今年も観客を魅了することは間違いがない。きっと、日本のひとり芝居の世界では、今年の最大の収穫の一つになると思う。
 たった一回の公演だし、これを観ない人は、英明と壬生の不思議なワールドに浸ることができる絶好のチャンスを逸することになる。
 私は「おきな屋一二三座」(私が勝手に命名した)の第2回公演を実現できる幸せをいままさに実感し、あと一週間この公演にかかりっきりにすることを決めている。
 ちなみに、古川壬生は今でこそ、NHKラジオの日曜名作座の常連脚本家だが、かつては泉谷しげる三上寛らとともに名をはせたこともあるれっきとしたロックミュージシャンだ。彼の幻の名盤の「壬生」がこの6月にCDとして東京から復刻発売されることも決まっている。その意味では、壬生にとってもこの舞台は、幻のロックミュージシャンとしての存在を再現実証する場でもある。
 こんな感じで、まことに楽しみな「英明と壬生の世界」が旧おきな屋新町店で4月20日(金曜日)午後6時半に開演される。