今日の論語一日一章「仁者安仁、知者利仁」

 今日の論語一日一章は、第4篇「里仁第四」の第2章「仁者安仁、知者利仁」(仁者は仁に安んじ、知者は仁を利す)です。
 これの漢文原文はこうです。
 「子曰、不仁者、不可以久處約、不可以長處樂。仁者安仁。知者利仁。」
 また、読み下し文はこうなります。
 「子曰く、不仁者は以て久しく約に処るべからず。以て長く処るべからず。仁者は仁に安んじ、知者は仁を利す。」
 さらに、中国語簡体表記はこうです。
 「子曰,不仁者,不可以久处约,不可以长处乐。仁者安仁。知者利仁。」
 ここで、日本語訳はこうなります。
 「孔子が言われた。不仁者は本心の徳を失っているから、久しく貧賎の境遇にいると飢寒に逼まられて邪悪に陥るものである。故に『久しく約に処るべからず』というのである。また長く富貴の境遇にいると覚えず知らず驕奢に流れるものである。故に、『久しく、楽に処るべからず』というのである。ただ仁者はいかなる境遇にいても本心の仁徳を失わないし、知者は深く仁を好んでこれを得ようとしているから、久しく約に処ることも出来るし、長く楽に処ることも出来るのである、と。」
 また、この章の語句・語彙の注釈はこうです。
 不仁者;私慾のために本心の徳を失った者のことをいいます。
 べからず(不可);不能の意味に解します。
 約;貧賤のことをいいます。
 楽;富貴のことをいいます。
 仁に安んず;心を用いないで、自然にしても仁に違わないことです。
 仁を利す;利は貪るという意味です。仁をよいと知って、必ずこれを得ようとすることをいいます。
 この章は、貧富貴賎に処する上について、人品の同一でないことを述べたものです。
 仁者は仁と一体となっているが、知者はまだ仁と一体となってはいないから、両者の間に、深いと浅いとの区別はあるけれども、どちらも貴賎貧富等のために心を奪われることはない、と孔子は言っています。