中国の交通・住宅・教育事情

 中国の道路交通は最悪だ。道路にまで人があふれ、人口が多い分に道路が整備されていないのに、とにかく人民元を乱発しているバブルの中国にあっては、人並みの生活といえば、ローンで平均3LDKの6階建てのマンションの1室を買い(長春の郊外で50万元から70万元、旧市内で80万元から100万元)、10万元から20万元の自動車を買うというのが最低のステータスなのだ。
 今の中国は、10万元から20万元の高級車までとにかくいくらでも車を売り、そのためいくらでもローンを組ませるというやり方だ。車検も車庫証明もあったものではない。道路に団地に車があふれようがなんのそのだ。運転手の交通マナーも最悪だし、信号もすくない。それに歩行者も近くに信号があり、横断歩道があっても、それをしないでどこからでも5車線の道路でさえ横断してしまう。車道の中央はおろか車線の端に立って、車が通り過ぎたら次の車線まで横断するといった塩梅だ。
 車のない人の交通手段はバスだ。たいがい市内1元のバスはスリの巣のようなもので、複数のプロが乗りこんでいるというから凄い。タクシーの最低料金は5元だから、タクシーの方がはるかに安全だ。バスもスリだけでなく、運転が乱暴で、はっきり手を挙げないと通過してしまうし、乗ったらすぐ猛スピードで発車するから倒れないようにするのが一苦労だ。運転手とスリがグルなのではないかと疑いたくなる。飛行機はべらぼうに高いので、遠距離の移動は鉄道だ。中産階級のひとは高速鉄道を利用する。軟座と硬座があり、二等車は硬座の方だ。学生や農民は高速鉄道(D車)ではなく、普通車・急行を利用する。これは、安いが恐ろしく時間がかかり、座席指定なしでもみな空いている席に先に座る。競争と喧嘩があちこちで起こる。
 汽車の場合、個人で切符を購入するのは非常に難しい。駅に行って買わなければならないし、長蛇の列だからものすごく時間がかかる。鉄道省の発見売り場の人員は日本と同じ人員で、そこに10倍の人がつねに並んでいると考えればいい。切符を買うのが非常に大変だ。今回の瀋陽と北京間の高速鉄道の切符は半分だけ指定券だし、北京・長春間は立ち席で6時間、しかも座席指定と同じ金額なのだからあきれる。これも中国流だ。緊急の時は役に立たないのが鉄道だ。切符売り場と改札口付近はまさに戦場だ。どこへ行っても人・人・人だ。とにかく、どこでもなんでも10倍の人が日本のどこかより人が多いのだ。
 大学教師の月給は4000元程度。年俸にして5万元から6万元程度だから、仮に80万元のマンションと20万元の自動車を購入すれば、夫の給料をローンの返済に充てるとゆうに元金だけで20年はかかる勘定だ。妻の収入が生活費となる。独身者はだいたい月500元くらいのアパートか大家の同居人になる。結婚しても共稼ぎでなければマンションは持てない。子どもはひとりで、どっちもひとりっ子の場合、二人まで認められることになったのは、最近だ。教育費のことを考えれば、子どもはひとりということになる。一人っ子政策の罰則は公務員にはことのほか厳しく、罰金のほかどちらかが職を辞さなければならないのだ。
 元同僚の先生の話だと教授になると月7000元の給料のほかに、年8万円の手当がでるのだそうだ。この賃金格差のほかに、さらに学部長や学長になるとこのほかに多額のリベート収入があるというから凄い。中国の学者は、研究や教育のためというより、金儲けのために権力者に媚入り、ひたすらゴマをすらねばならない。これではノーベル賞級の学者など出るはずもない。教育労働者としての労働基本権や社会保障制度がないに等しいのだから、つねに馘首を恐れるあまり、権力者に媚び諂い、上司への付け届けは日常茶飯事、当たり前のことなのだ。
 これは大人だけではなく、学生にも蔓延している。各種の奨学金に対する奨学生の推薦は、教授会の推薦によるものではなく、政治担当の生活指導員が行うからだ。ほとんどが共産党員のこの指導員は学生からのリベート、さらに親からのリベートで8000元の国家栄誉賞の奨学生を推薦するのだ。これでは、真面目な学生は腐ってしまう。それでもじっと我慢してわが身の不幸に耐えているのが実際だ。