12日の合評会の報告

 4月12日の北狄362号の合評会は、千成寿司で行いました。参加者は、宰木陽二、倉谷広隆、秋村健二、それに私の四人でした。四人の作品の合評に加え、青柳さん、井藤さんの作品についても話題にのせました。
 合評会はその後、4人で雑談となり、宰木さんを中心に、仏教の話、門徒宗の話、それに木造の話、旧制木造中学、弥三郎節の起源の話、谷崎純一郎の東奥日報入社の話、外三郡史の話、安東と北畠の話にまで、夜の九時過ぎまで楽しい話がつづきました。

 青柳さんから北狄の同人誌評のお知らせがありましたので、掲載します。

<文芸同人誌会通信>から

文芸同人誌「北狄(ほくてき)」362号(青森市
 本誌の後記「編集室」には、合評会では「結局は飲んで騒ぐだけ終わる。それでいいのか」という問題提起があって、かなり議論が弾んだとある。かつては名門同人誌として、評価される優秀作が多かったのに、近年は鳴かず飛ばずではないか、という。そこに、時代の変化があるのではないか、それでも三田文学の評には何度か取り上げられているのだが……という意見があったという。多くの同人誌に共通した課題ではないだろうか。ただ、傑作を目標にするなら、公募してみれば時代に合ったものなら、世にでるはず。また、スタンダールのように100年後にしか評価されないとわかっていて書く姿勢もある。多くの同人誌は共同で発表の場を作ることが目的なので、作品の質を問うのは二義的なことである。目先の評価は、書く上でのちょっとした彩りにすぎないであろう。

【「浮島のあかり」青柳隼人】
 家族娘と妻に先立たれ、自分も再起不能の病になった教授と知り合った水雲燈子の視点で書かれている。前半は燈子の母親の境遇との関係が述べられ後半は、教授の亡き家族との精霊との出会いを求める話になっている。筆致の様子から、作者は女性のようだ。全体に長く紙数を費やしている分、雰囲気がでている。が、内容が2分されているので、浸りきる気分が薄い感じもする。でも根気よく統一した雰囲気でまとめられている。

【「精三老人のねぶた」笹田隆志】
 ねぶた祭りの様子をテレビでみていて、あのような巨大な力強い大型提灯をどうやって作るのだろう、と疑問に思っていた。これを読むと、その様子が、よくわかる。昔は提灯づくりの人が、やっていたという。その家の子供の視点で散文小説風に町の風景から入る。ねぶたの伝統が、時代の流れの中で作り方や素材が変わってくる。ここでは少年が、父親のねぶた師の仕事の道に入らない。そういう時代背景があるからで、伝統的な製作法が失われることが、滅びゆく予感を感じさせるが、しかし時代の変化なかで、新しい伝統承継の形が生まれるのかも知れないと思わせる。

【「青年の階段の中で」秋村健二】
 高校生時代のすでに過去の時間のなかに埋もれてしまった出来ごと、情念を綴った散文。歌の詞に「青春時代は、迷ってばかり。青春時代が夢なんて後からほのぼの思うもの」というのもあるが、濃密な学生生活時間があったことに、羨ましいものがある。
 
 そのほかの短い散文を読んだが、それぞれマイペースの作風で充実している。とくに議論するほどのこともないのではないか。