劉暁波氏報道の謎

 日本がノーベル化学賞の二人受賞で騒いでいた翌日の夕方、東京の友人から劉暁波氏がノーベル賞になったとメールが入った。その友人が文学関係の人なので、てっきり文学賞かと思いきや、そうではなかった。
 その日は国慶節明けの金曜日で、私は研究室にいた。中国では一切報道されていなかったし、周りのだれに訊ねても、まったくわからなかった。日本のマスコミの報道をインターネットで調べて、初めて文学賞ではなく、平和賞だと分かった。9時過ぎに宿舎に戻り、NHKをつけた。ニュース番組でノーベル賞のくだりになると、なぜか放送が途絶えた。それが9日まで続いた。民主化運動の立役者である劉暁波氏の平和賞受賞に中国政府は不快感を露わにして、彼を受賞させないようにと申し入れまでしたようだ。
 尖閣諸島領土問題を棚上げにして日中間のキクシャクした関係に和解の兆しが見えたのはこの時期と重なる。拘留されていたフジタの最後の社員も土曜日釈放された。劉暁波氏に関しては、いまだ、大学も学生も何の反応もない。中国では、だれかのノーベル賞よりも、今の生活、明日の生活の方が大切だ。学生たちは、将来への漠然とした不安を断ち切ろうと皆、懸命にいまを生きている。つくづく、日本は島国だなあと思うことしきりだ。