非職業作家の幸福

 私はいま、「北狄」を中心に「遙」、それに「文ノ楽」と三つの同人誌に所属している。北狄と文ノ楽は文学の同人誌だが、遙は論説や評論もふくめて総合誌だ。私は遙ではなるべく創作(小説)を書くことにしている。
 私はプロの職業作家ではないので、書くのはほとんどこれらの同人誌だ。自分の原稿は自分で費用を負担して掲載印刷してもらう。同人誌なんか、わざわざ金を出してまで読もうという人はめったにいない。大概は送られたり、図書館で読んだという人ばかりだ。私としては読んでくれるだけでありがたいと思う。
 認められたい、有名になりたい、という気持が微塵もないかというと嘘になるが、プロになろうと意識して、せっせと文学賞に応募している人に比べると、まったく根性がないというか、たわいもない動機でものを書いている。ただ、自分をみつめるため、この社会、この世界で生きていることを確認し、自覚するために書いているのだ。
 でも、いいことがある。あったといってもいい。ちいさな賞だが小説を書いて2回も賞をもらったし、掌編小説が2回も地方紙に掲載された。それだけで十分なのだが、私にしか書けないことを生きている間に書き上げようという欲望がでてきて、書くことと同人誌に所属することがやめられないでいる。
 しかも、最近は書けば書くほど、私の目標には程遠い作品ばかりで、けなされることはあってもほめられたことは一度もない。それでも、いつかみていろ、という気持で書き続けていくしかないと思えるようになった。
 そんなわけで、無職年金生活のいまは、まったく非職業作家生活を満喫している。幸せの一語に尽きる。