今日の論語一日一章「有君子之道四焉」

 今日の論語一日一章は、第5篇「公冶長第五」の第15章「有君子之道四焉」(君子の道四あり)です。
 これの漢文原文はこうです。
 「子謂子産。有君子之道四焉、其行己也恭、其事上也敬、其養民也惠、其使民也義。」
 また、これの読み下し文はこうなります。
 「子子産を謂ふ。君子の道四あり、其の己を行ふや恭、其の上に事(つか)ふるや敬、其の民を養ふや惠、其の民を使ふや義。」
 さらに中国語簡体表記はこうなります。
 「子谓子产。有君子之道四焉,其行已也恭,其事上也敬,其养民也惠,其使民也义。」
 ここで、この章の日本語訳はこうです。
 「孔子が私(ひそか)に子産を評して曰われるには、『子産には君子の道に合する行いが四つある。己の身を持つには恭謙である。上の人に事えるには謹恪である。民を養い育てるにはこれを愛しこれを利する。民を治めるには義をもってこれを正しくする。』と。」
 ついては、この章の語彙・語句の解説はこうです。
 己を行ふ;人や物に接する時の己の行いをいいます。
 恭;謙遜の意です。
 敬;謹恪(つつしむ)の意です。
 惠;愛し利することの意です。
 民を使ふや義;使は使役の意味ではなくて統御する意味で、義は正しい道のことです。
 この章は、孔子が子産を称美したものです。子産は鄭の大夫の公孫僑という人です。子産はその字です。春秋時代の賢人であります。
 この章に出てくる子産は、鄭の上卿で位も高く材も人に優れていたけれども謙遜して侈(おご)る心がなかったという。また鄭の君四代に事えて己の権威が重くなったけれども、君に対して敬意を失うことはなかった人といわれています。また鄭が乱れて君は出奔し、民は困窮したときにも、恵みをもって民を養ったといわれています。また当時、鄭国には強族が多く身分に過ぎた行いをする者があったけれども、義をもってこれを治め整えたといわれています。