「道千乗之國」の法こそ日本に必要

 孔子の「論語」の学而第一の五に「道千乗之國」がある。
 「子曰、道千乗之國、敬事而信、節用而愛人、使民以時、」
 「子の曰わく、千乗の国を道びくに、事を敬して信、用を節して人を愛し、民を使うに時を以てす。」
 金谷治の訳は以下の通り。
 先生がいわれた、「諸侯の国を治めるには、事業を慎重にして信義を守り、費用を節約して人々をいつくしみ、人民を使役するにも適当な時期することだ」と。
 ここで、「道びく」は「導く」も他の教本では使われている。両方の字が使われている。諸侯の国、すなわち「千乗之國」とは、周王朝のさだめで、戦時に戦車千台を出すことのできる国、すなわち諸侯の国のことである。天子は万乗。また、適当な時期とは、主として農民を対象にして農繁期を避けることを、いっている。
 3・11大震災と福島第1原発事故でまさに日本は国難にあえいでいる。
 2009年に民主党主導で政権交代がなされた。民主党マニフェストには子ども手当の新設、高速道路の無料化、それに八ッ場ダムなどのダム建設の凍結・廃止があった。子ども手当も高速道路の無料化も一種の減税策といえた。ダムなどの建設中止は、公共事業からの撤退を意味していた。まさに、民主党は「万乗の国」を導く方策(マニフェスト)として、公共事業の見直し・廃止と徹底した行政改革により歳出の削減を図り、一方では減税策として子ども手当や高速道路の無料化を掲げて、国民の支持を得たのだった。
 2012年度の国家予算をみるまでもなく、大震災と原発事故の復興のためと称して、国民に対して十分な説明もないまま、政府・民主党政権交代の国民との約束であるマニフェストを見直し・撤回しようとしている。子ども手当・高速道路の無料化の見直しに加え、消費税増税八ッ場ダム建設の再開をはじめ新たな公共事業の投入を企図している。これでは国民の信頼は失墜し、次の総選挙で野党に敗れるのは目に見えている。
 2010年の参議院選挙で菅政権は消費税引き上げをはじめとする増税を掲げて敗れたのは記憶に新しい。2500年前に孔子が言っているではないか。為政者のやるべきことは、まず徹底した行政の節約と国民に対してはまず減税だと。そして、夏場の農繁期の選挙はだめで、冬場の農閑期に選挙を実施し、じっくり国民の間に政策を定着させるべきだとし、そのうえで国民の協力を得るべきだ。
 そういうことから言えば、マニフェストは国民との約束だから、政権にある間は、あくまでマニフェストを完遂すべきとの小沢一郎の主張は真偽はともかく頷ける。
 とにかく、国何だからと言って、国債を乱発して、ますます財政危機に拍車をかけるのはいかがなものだろうか。だからといって、消費税をはじめ大増税はもっとだめである。
 日本を救うのに政治、とりわけ中央政府や既成政党では無理だと言ってもてはやされているのは、橋下徹大阪市長大阪維新の会代表)である。たったひとりの男に、大阪府府民)も大阪市(市民)もタジタジだとタカを括っていたら、こんどは市長となってすぐ東京都に乗りこんで、宣戦布告している。
 民主政治において、議会はまだまだ、各種団体の利益代表であり、国や自治体の全体を把握していない。だから、為政者は議会側と対決する姿勢がなければ、いい政治がおこなわれないのがはっきりしている。そこが問題なのだと思う。
 政治と文学、文学と政治の問題は、明日としたい。